概日リズム

1.生物時計 (横井佐代子,2011)

 バクテリアからヒトに至るまで、地球上に生息するほとんどの生物は体の中に「時計」を持っています。私たちがふだん時間を知るために使う時計と区別するために、この時計は「生物時計(または、体内時計)」と言われています。生物時計は、独自の周期で時間をきざみ、生物のさまざまな生理現象(活動-休息、ホルモン分泌など)のタイミングをコントロールしています。

 哺乳類の生物時計は、右眼と左眼から脳に伸びた視神経が交差するところの直上の視交叉上核(しこうさじょうかく)にあるといわれています(図1)。

図1.視交叉上核の位置。マウスの脳を横から見た図。光の情報が眼から入り、視神経、視交叉上核などを介して松果体に届くまでの経路を示しています。図は、海老原史樹・深田吉孝『生物時計の分子生物学』より引用、一部改変。

2.概日リズム

 約24時間の周期で生命現象が繰り返されることを概日リズム(がいじつりずむ)と言います。
ハムスターは夜行性(やこうせい)なので、暗い時間帯に活動し明るい時間帯に休息します。1日の長さを24時間に保ったまま、照明の点灯と消灯の時刻を人工的に変えてやると、生物時計は活動と休息の時間を照明の点灯/消灯の時間に合わせようとします。これを同調(どうちょう)といいます。そして、同調のきっかけとなる物のこと(ここでは照明)を同調因子(どうちょういんし)といいます。その観測例を図2(a)に示します。

 では、同調因子がない真っ暗な部屋で何日も過ごしたらどうなるでしょうか。ずっと活動し続けるでしょうか。いいえ、約24時間の周期で活動と休息を繰り返します。これは、生物時計の独自の周期が行動に表れるからです。これを自由走行(じゆうそうこう)といいます。その観測例を図2(b)に示します。図2(b)のマウスは24時間より少し長い周期で自由走行しています。このように、生物時計の周期は約24時間(約1日)であり、ぴったり24時間ではありません。よって、概(おおむね)日(じつ)リズムと言われます。




 ○参考文献
  ・石田直理雄『生物時計のはなし』(2000) 羊土社
  ・海老原史樹・深田吉孝『生物時計の分子生物学』(1999) シュプリンガー・フェアラーク東京
  ・小澤瀞司ら『標準生理学 第6版』(2006) 医学書院
  ・本間研一・本間さと・広重力『生体リズムの研究』(1989)北海道大学図書刊行会

 ○参考になるURL
  ・日本時間生物学会  http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsc/
  ・日本生理学会    http://physiology.jp/
  ・日本動物学会    http://www.zoology.or.jp/